おくりもの

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ずっとずっと待っているよ あなたのこと
時の風に吹かれながら ずっと待っているよ

便りと共にアレンが贈り物をおくってきた。
家の前で従者がかしこまって膝をつく
「アレン様からあなた様に贈り物がございます
お受け取りくださいませ」
大きな包みにはリボンがかけられて、
何も言えず口をとんがらかすあたしの背中にテナーが抱きついた。
「あらー 素敵じゃない!こんなにたくさん」

箱の中には豪奢なドレスに首かざり、綺麗なお花がたくさん入っていた。

テルー 元気? 僕は元気だよ

短い手紙を窓辺で眺めながらテナーは外を見やった。
「嘘つきだ…」

いや…嘘じゃないかもしれない
アレンはあたしの知らない所で幸せを手に入れたのかもしれない
もう振り返ることもせずに光の中で暮らしているのかも

あたしだけ残されて
あたしだけ一人ぼっちで
アレンを好きなまま 一人で生きていくんだ

もう一度 会いに来ていいかって言った言葉を嘘だったんだ
こんな綺麗なもの送ってきてあたしが喜ぶとでも思ったの

「寂しいのね、テルー」
「さっ寂しくなんかないわ!」

あたしはムキになってテナーに反論した。
「ほうら、何て綺麗なドレスなの」
テナーはドレスをひらひらさせて無邪気に笑っていた。

どうしてテナーは平気なのだろう
大好きな人と離れても平気な魔法があるのだろうか

「アレンがあなたのために選んだのかしらね」

「違うよ!あたしにドレスなんて似合うわけないのに
こんなもの送ってくるなんて…」

足を両手で包みうずくまる、こんなものであたしが
喜ぶと思った?アレン

「テナーにあげる」
「あら、いらないの」
「いらない」

「ありがとう、でも私もいらないわ」
テナーはテルーの顔を覗きこむとふふっと優しく微笑んだ。
「だって私はもう持っているもの」

戸棚からテナーは古びた銀のペンダントを取り出した、
それを大事そうにつけると鏡に向かってポーズをとる。
「これね、私があなたみたいに少女だった頃
もらったのよゲドに」
「テナーも」
「そう、ゲドじゃない人が持ってきたわ
大賢人から頼まれましたってね」

テルーは興味深そうに顔をあげてテナーの方を見た。
「私、もう怒ってねー、その人にペンダントを投げつけたのよ
こんなものいらないってね」

テナーは思い出し笑いをしてくるりと回った。
「その人は弱ってね、私に懇願してきたわ
どうかお受け取りくださいって…
大賢人がご自分で必死にお選びになったのですからって」

『このぐらいの女の子、そうあんたの娘くらいの
どんなものが喜ぶかな』
『お客さんがいいと思うものならきっと喜びなさる』
旅の商人の言葉にゲドは頭を抱えた。
『困ったな…私は女性に贈り物などしたことないんだ』
『その人はお客さんの大切な人かい』

大賢人が言ったんだって
『大切な人だ、ずっと寂しい思いをさせてしまってね』

私はまた腹がたってしまって
馬鹿なゲド…私がずっとここで待っていると思うの
あなたなんて知らないところに行ってしまうとは考えないの
アチュアンの墓所で私の手を取ってから
あの人、私のことを自分のものだと勘違いしているのかしら

「男ってわがままよね」
でもね…怒りは静まって嬉しさがこみあげてきたの
ああ、あの人は私のために一生懸命 これを買ってくれたんだわ
私がここにいるってずっと思ったまま

彼が真剣に選んでいる姿を思い描いていたらおかしくなってしまった

「信じているのね テナー」
「ずっとずっとね」

テルーは箱の中の贈り物を膝の上で寂しさと愛しさごと抱きしめた。
「あたしも本当は嬉しいのよ」

私は本当はゲドを裏切ったの、小さな反抗
一度結婚したことを知ったあの人の顔を忘れない

『ああ…ゲドが怒るなって思った』
『ちょっとね 怒った』
あの時、私は視線を落とす彼の顔を見つめながら 
この人が本当にずっと前から好きなんだと気がついたんだわ

(テルー あなたは待つ必要なんてないのよ
その翼を広げて会いに行けるのだから)


カランと扉のベルの音が鳴った。
「はーい」
元気を取り戻したテルーが外に飛び出していくと
慌ててバタバタと戻ってきた。

「テルー! どうしよう!!アレンがアレンがいる!」

真っ赤になった顔を両手で隠しながら戸惑っているテルーに
テナーはあらあらと笑い声をあげた。

「駄目よ しっかり放さないようにしなきゃ」
「うん!わかった!」

ぱたぱたと再び跳びだしたテルーは両手を広げるアレンの
胸の中に飛びこんだ。

「テルー、僕の手紙ちゃんと読んでくれた?」
「ああ、アレン!」
言いたいことがたくさんあるのに胸がつまって言葉にならない
手を伸ばしてアレンの首根っこにありったけしがみついた。
「テルー、会いたかった」
「アレン!」

その後を付いてきたのはアレンを連れてきた大賢人の姿だった。
「やあ テナー」
「ゲド…」
テナーが胸のペンダントに手をやると、気がついたのか
大賢人は柄にもなく頭をかいて赤くなった。

「ふふっ」
テナーは幸せそうに再び笑ったのだった。

「今日はごちそうにしなきゃね」

おしまい


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