恋の代償

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  誓い  

戦いの終焉・・
ネルガルとの壮絶な戦いは、エリウッド達の手で勝利がもたらされた。
精鋭部隊の生還。
プリシラは、残った者達の中に混じり、傭兵を中心に構成された
ギィ達剣士部隊の帰りを待っていた。
戦士達の行列を回り囲むように人々は、花を投げて、
喜びの声をあげた。
(エリミーヌ様、お願いします)
プリシラはそっと祈りを捧げると、身を乗り出すようにギィの姿を求めてきょろきょろと見回した。
列の最後の方に、切れぎれになった服、傷だらけの顔、
ぼさぼさになってしまった三つ編みのギィが歩いてきた。

プリシラの顔に笑顔が広がり、ギィに向かって遠慮がちに手を振った。
「!」
気配を感じ取ったかのようにギィの目がプリシラを見つけた。
(プリシラ!!)
ギィは、両手を大きく振ってプリシラに答えた。

それからしばらく経ち、軍の解散と共に、皆は各々の地に散らばっていった。
怪我が回復するまで、マシューの居るオスティアに滞在していたギィだったが
旅立つ準備をして、世話になった人達に別れの挨拶を始めた。

荷物はたった一つの布袋と腰の剣のみ、簡単なものだった。
「………」
ギィは、何かをじっと考えこんできたが意を決したようにベットから腰を上げて、部屋を跡にした。

「また、来いよ。俺はいつでもここに居るからさ。」
「あんたを頼るとろくな事になんねえからなー。」
ギィは、苦虫をつぶしたような顔をしてマシューを見た。
マシューも愉快そうに笑った。

「じゃあな。」
「じゃあ!」
ギィは手を振って、マシューと別れの挨拶をした。
散々、ケンカばかりしたが、いざ、「さようなら」となると寂しくなる。

ギィは、プリシラを探しに行こうとしたが、その必要はなかった。
道の端で、ただずんで待っているプリシラをすぐ見つける事が出来た。
ゆっくりした歩みで近づくと、プリシラもギィの方を見た。
「プリシラ…。」
「ギィさん。」
風がさあと流れてプリシラの髪をゆらした。

「あのさ、」
ギィの言葉に、プリシラは顔をあげた。
「俺、こんなに誰かに惚れたのって初めてなんだ。」
ギィの顔は優しくほころんだ。
「私もこんな気持ちになったのはギィさんが初めてです。」

「あんたを幸せにするって言った言葉、あれ嘘じゃない。
本当にそうしたいって心から思っているから。
でも、俺はまだ半人前だから、今のままじゃ絶対、後悔する事になると思う。
だから、少しだけ時間をくれ。」
「・……。」
「俺が一人前になったら、あんたに会いに行くよ。そしてまた、告白する。
待っててくれなんて言えないけど・・。俺は1日たりとも忘れないから!」
ギィは、揺らぎのない真っ直ぐな眼差しをしていた。

「知らないんですか、ギィさん。」
「え?」
「私、一度、決めた事は絶対曲げないんです。
おばあさんになっても待ってしまうかも。」
プリシラは、明るく言った。

「早く私に会いに来てくださいね。」
「ああ!」
プリシラは満面の笑顔をギィに向け、ギィもそんな彼女を眩しそうに見つめた。

「じゃあ、笑って別れよっか。」
「ええ。」
お互い顔を見合わせると、にこっと微笑みあった。
ギィは、そのまま笑顔を崩さないで、手を振って走っていった。
プリシラもギィが見えなくなるまで手を振り続けていたが、彼が小さくなって見えなくなった途端、
両手で顔を覆って泣いてしまった。
どうしても笑顔で送り出してあげたかったから、涙を堪えていたのだ。
ギィが走り去った理由もぐしゃぐしゃの泣き顔をプリシラに見られたくなかったからだった。

(離れたくはない、一緒に居たいんだ。でもっ 隣で胸を張って笑えるその日まで、
今は、さようなら、プリシラ。)
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