英雄包囲網

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前編


最近、自分を見る女性達の目が気になるのは何故だ、
アイクはここ数日、誰かに観察されている気配を感じていた。
それも少数ではない、複数である。
好意をもたれているとは違う、彼女らは自分を鋭い視点で探ってきている、
好奇心に目を輝かせている者もいる。

(俺には後ろめたい事などないはずだ)
公私共に健全で裏表ない英雄アイク、これまで誰かに想いを抱かれる事はあれど
腹を探られる事になろうとは、このような仕打ちにあう理由がわからない。

「何だって?お前が女達に付けねらわれているって」
「ああ、ベオクだけではないレテ達の俺を見る様子もどこか変だ」

ふーん、アイクの相談をライは耳をぴくりと動かし聞いていた。
「ベオクだけはなくラグズの女のお前を見る目もおかしいと」
「原因がわからんのは気持ち悪い」
アイクは相当参っているようだった。
ライと個人的な話をする時は人目を避けるようにしているので、
女達の視線はここには届かない。
ことライは気配を読む事に関しては最高に上手いのだった。

がさっと音がしてネズミらしきものが茂みを駆けていく
びくっと肩を怒らせるアイクの様子にライはおかしくなって噴出した。
「お前をこんなに怖がらせるなんて、女達って本当に恐ろしいな〜」
「冗談言うな」
「まあまあ、将軍おモテになって」
ライはアイクの肩を手を置くと挑発するような眼差しを向ける。

「妬けるね〜」
ライの瞳の瞳孔が猫のように大きくなる。
「!」
「英雄アイクを射止めたいと
女達は火花を散らしているとか」

「ライ」
たしなめるようにアイクが言うとライが悪いと謝った。
「ん〜、お前に女性関係を相談されるのは
あんまり良い気分しないのさ」
悪いと今度はアイクが謝った。
目と目を絡ませるその仕草はそれは友情のものを超えていた、
もはや普通の関係ではない、お互いは特別な存在だと確信しあっていた。

「ライ、俺はお前を選んだんだ」
「わかっているって」


これは秘密であった。

誰にも知られてはいけない秘密。

ベオクの英雄、ラグズの参謀 二人は気づいていなかった
この謎に忍び寄ろうとしている無数の影の足音を
間違いなく女達の目的こそ、アイクの私生活を暴くことだったのだから。

「まだ尻尾を出さないわね、勇者様」
ララベルの売り物小屋で女達は集まって何やら話しこんでいた。
「ララベル、妙な噂を吹聴するのはお止めなさいな
あなたに振り向いてくれないからって、アイクがそのあれだなんて」
ティアマトはララベルに眉をひそめて文句を言った。

「でもララベルさんだけじゃないんですよ、皆、心の中ではずーっとずーっと
疑っていたんですから」
マーシャがララベルに助け舟を出す、他の女達もそうだそうだとうなずく
心の中で年が経つにつれて大きくなった疑惑の渦
「違うわよ、私はアイクの事を小さい頃からずっと見てきたけど
そのような素振り見なかった…ホモだなんてありえないわ」
親代わりとしてずっとアイクを見守ってきたティアマトには許しがたい噂だ。

「でもね…勇者様の隣に女性が居たことはなかったでしょ」
うっとティアマトは言葉を詰まらせた。
「初恋はいつ?」
え?とティアマト
「いつだったかしらねミスト」
いきなり話を振られてミストはおろおろして昔を思い出そうとした。
(いつだったっけ?)

「別にいいじゃないか、アイクが真正の男好きでもそうじゃなくても
ラグズでは同性と関係を持つことはおかしい事じゃない」
ラグズと行動を共にする事にしてベオクが驚いた事は
同性同士のカップルの存在だった。
鷹王とリュシオンをはじめ、子息繁栄の妨げになると国家問題に発展している事項だと言う。
レテやリィレが言うには普通だというのだ。

「アイクさんに決まった相手がいるなら私は知りたいだけよ
実らぬ恋に身を焦がすほど若くはないしね」
ララベルはほおーっと切ないため息をもらす。
「それが男だって女だってこだわりはないの」

「全くくだらない話だが、もしこれが真実なら燃えるな」
「あらあら、タニスったら…私もです」
タニスの問題発言にあっさり同意するシグルーンに一同は軽く引きながら
あーでもないこーでもないと繰り返す。

「私…も気になります、気になりすぎて…お腹がすきました」
イレースもふらふらしてこの会議に参加していた。
誰もが気になるのだアイクに浮いた噂が立たないこの不自然さを

(皆に疑われちゃっているよお兄ちゃん
早く誤解が解ければいいけど)

ララベルを中心にまとまったのは、アイク包囲大作戦であった。
ここ数日のち、アイクの寝所に徹底的に包囲網を張る…
怪しい動きがないか調査すべしのこと

「しばらくアイクさんを油断させる事、それから決行するわよ」
恐ろしいぐらいの団結力、誰もがこの謎の解決をさせスッキリしたいと考えていた。

「何もなかったら高くつくからね、ララベル」
ティアマトはむすっとした顔でララベルに言った。

何も知らないアイクは女達の視線の脅威から解放されて喜んでいた
自分の思い過ごしだったのだ、過剰に反応してしまったのだ。

「待たせたな」
アイクは簡単に背後を取られ両の目を塞がれる、しかし剣を抜くことはない
「ライか」
そしてアイクの寝所の天蓋に上手い事忍びこんできたライの姿もあった。
まだ二人は気がついていないこれから起こる惨事を
大作戦の発動を…


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